私はただのおじいさん。平凡でどこにでもいるおじいさん。
ある日、1日をゆっくり過ごしていると、孫のあきちゃんが
壁に大きな落書きをしていた。
私は、それを見つけてあきちゃんの近くにいった。
あきちゃんは、私に気付き、怒られると思ったのか
私を黙って見つめた。
私は「怒らないから、もっと描きなさい」といった。
すると孫が「おじいちゃんの若い時は、誰よりも頼れる男前だったんだね」
と言った。
私は「えっ、おじいちゃんの若い時を知っているの?」と言った。
孫は「うん、何度も見たよ」と答えた。
私は訳が分からなかったが、すごく嬉しかった。
少しすると、あきちゃんはウサギをもってきた。
私が「どこのウサギをもってきたの?」と聞くと
あきちゃんは「おじいちゃんのだよ」と言った。
ふと大きなまばたきをすると、私はベットの上だった。
リアルな夢を見ていたようだ。しかし私には孫がいない。
孫どころか子供がいない。
私が23歳の時、幼なじみのあきちゃんと結婚した。
結婚生活は楽しい毎日だったが、子供ができないのが唯一の悩みだった。
だから、5月の梅雨の頃、あきちゃんに内緒でウサギをかってプレゼントした。
梅雨がくると秋子を思い出す。