誰か僕のおやつを取っていった。
ネックレスの様に繋がった形をしたダイアおやつを、口にくわえて取っていった。
でも、取ったやつがどんな顔だったか思い出せない。
顔がぼんやりとしか、浮かんで来ない。
取られた時、取り返したい気持ちでいっぱいだったが
なんだか、恐くて何も言えずに、固まっていた。
ぼくの飼っている犬がすごく吠えていた。
僕は何も出来ずに、固まっていたのに、僕のぶんまで吠えていた。
僕は、取られて少しの間、動けずにいた。
少し恐い気持ちがなくなってから、腹が立ってきた。
おやつを取ったやつにも、何も出来なかった自分にも…。
固まっていたくせに、今となってはすごく腹が立ち、
顔が熱くなってきた。
お腹の中から、何かが作られるように、
内蔵が熱くなり、それが顔に上がってくる。
内蔵は震えあがり、気付けば体のすべてが震えている。
「絶対に、おやつを取った犯人を見つけたい。」
そんな気持ちでいっぱいになって時、
頭が回り出し、犯人の顔が見えてきた。
…どんな顔か見える様に薄目にして記憶をたどる。
…なんだ、おやつを取ったのは、自分だ。
見えなかったのは、見たくなかったからだ…。
無くしたと思った、ダイアのおやつは
自分で、取られたくないから隠したのに
自分で、隠し場所を忘れた。
隠し場所を思い出し、隠し場所から見つけた時には思わず食べていた。
そんな自分が記憶から薄れて行ったのは、数秒のことだった。
ダイアのおやつの隠し場所は、綺麗な芝生の下だった。
終わり